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【実録小説】通勤電車で盗撮を繰り返した42歳IT技術者、ある朝の逮捕劇

目次

【実録小説】通勤電車で盗撮を繰り返した42歳IT技術者、ある朝の逮捕劇

プロローグ: 運命の日

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# 2023年6月15日 午前7時23分

東海道線下り電車。いつもと変わらない通勤ラッシュの朝だった。

車両の中ほどに立つ田中浩二(仮名・42歳)は、スーツのポケットに手を入れたまま、うつむいていた。額には薄っすらと汗が浮かんでいる。梅雨入り前の蒸し暑さのせいだけではない。彼の心臓は激しく高鳴っていた。

「今日も…やるのか?」

自問自答する声が頭の中で響く。やめろ、もうやめろ。理性がそう叫んでいる。だが、同時に別の声も聞こえる。大丈夫、今までバレなかった。今日も大丈夫だ。

田中の視線が、ゆっくりと前方の女性に向けられる。

その同じ車両、ドア付近に立っていた加藤美咲(仮名・28歳)は、スマートフォンを見つめながらも、背後に感じる視線に不快感を覚えていた。

「また…あの感覚だ」

ここ数週間、同じ時間の電車で感じる、言葉にできない違和感。誰かに見られている。でも振り返っても、誰もこちらを見ていない。考えすぎだろうか。でも、この肌を這うような感覚は何なのだろう。

美咲は知らなかった。この日が、彼女にとっても田中にとっても、人生が完全に変わる日になることを。

第1章: 犯行の始まり

# 半年前 — 転落の始まり

田中浩二は、都内の中堅IT企業でシステムエンジニアとして働く、どこにでもいる中年サラリーマンだった。妻と小学生の娘が一人。横浜市内の持ち家マンションで、平凡だが安定した生活を送っていた。

同僚からの評判も悪くない。真面目で、仕事は丁寧。少し無口だが、それも「技術者だから」で済まされていた。

変化が訪れたのは、昨年の冬だった。

仕事のストレスが積み重なっていた。新システムの開発は難航し、連日の残業。クライアントからのクレーム対応。そして家に帰れば、妻との会話もなく、娘は塾で遅い。一人でコンビニ弁当を食べる夜が続いた。

「自分の人生、これでいいのか」

そんな虚無感が、田中の心を蝕んでいった。

ある日、スマートフォンで何気なく検索していた時、違法なアダルトサイトにたどり着いた。そこには、盗撮された動画が無数にアップロードされていた。

最初は嫌悪感があった。こんなもの見るべきではない。でも、指はスクロールを続けた。そして、ある考えが浮かんだ。

「これ、誰が撮ってるんだ?普通の人間か?」

その疑問は、いつしか興味に変わっていた。

「自分にもできるんじゃないか」

最初の一歩は、小型カメラの購入だった。ネット通販で、ペン型のカメラを買った。値段は5,000円ほど。商品説明には「防犯用」「会議の記録に」などと書かれていたが、レビュー欄を見れば、誰もがその真の用途を知っていた。

商品が届いた日、田中は震える手で箱を開けた。

「まだ使うとは決めてない。持ってるだけだ」

自分にそう言い訳しながら、彼はカメラの使い方を研究した。

# 初めての犯行

最初の犯行は、12月のある寒い朝だった。

通勤電車の中、田中はコートのポケットにカメラを仕込んでいた。ボタン一つで録画が始まる。誰にも気づかれない。

前に立つ女性のスカート。

「やるのか?やらないのか?」

心臓の音が耳を塞ぐほど大きく聞こえた。手が震えた。誰かに見られていないか、何度も周囲を確認した。

そして、ポケットの中のボタンを押した。

カチッ。

その小さな音は、田中の人生の転落を告げる音だった。

電車を降りた後、駅のトイレに駆け込んだ。個室で、震える手でカメラの映像を確認する。

撮れていた。

その瞬間、田中の中で何かが崩壊した。罪悪感と、それを上回る興奮。そして、「バレなかった」という安堵感。

「一回だけだ。これで終わりにする」

そう自分に言い聞かせながらも、田中はその日の映像を自宅のPCに保存した。

第2章: エスカレートする欲望

# 常習化する犯罪

「一回だけ」のはずだった。

でも、一週間後、田中は再び同じカメラをポケットに入れていた。

「前回はバレなかった。今回も大丈夫だ」

二回目は、一回目より躊躇が少なかった。三回目は、さらに大胆になった。

一ヶ月後、田中は週に三回は盗撮を行うようになっていた。

最初のペン型カメラだけでなく、靴に仕込めるカメラ、腕時計型カメラと、装備は増えていった。ネット上には、同じような犯罪者たちのコミュニティがあり、「ノウハウ」が共有されていた。

「このカメラは角度がいい」
「この時間帯の電車が狙い目」
「バレないための立ち位置」

田中は、そうした「技術」を熱心に学んだ。仕事のスキルアップには熱心でなかったのに、犯罪の技術向上には異常な執着を見せた。

# 麻痺する罪悪感

初めて盗撮した夜、田中はほとんど眠れなかった。罪悪感で胸が苦しかった。被害者の顔が脳裏に浮かんだ。

「俺は最低だ。もう二度とやらない」

でも、次の日の夜には、撮影した映像を見返していた。

二回目の後は、罪悪感はやや薄れていた。三回目は、さらに。

人間の心は、恐ろしいほど慣れる。

半年後、田中にはもう罪悪感はなくなっていた。いや、正確には、罪悪感を感じないように心を麻痺させていた。

「誰も傷ついていない。触ってるわけじゃない。見てるだけだ」

そんな言い訳を自分に繰り返した。

「世の中には、もっと悪いことをしてる奴がいる。殺人とか、強盗とか。それに比べれば…」

犯罪者特有の、歪んだ自己正当化。

妻に対しても、娘に対しても、何も感じなくなっていた。家族との会話は最低限。休日も自室にこもり、撮りためた映像を整理する。

「パパ、遊ぼう」という娘の声も、「ちょっと仕事が…」と断る。

仕事のパフォーマンスも落ちていた。会議中もボーッとしている。頭の中は、次の「獲物」のことばかり。

同僚の一人が心配して声をかけてきた。

「田中さん、最近疲れてない?何かあった?」

「いや、何も。大丈夫ですよ」

笑顔で答えた。完璧な嘘だった。

# 油断の芽生え

三ヶ月間、一度も捕まらなかった。

この事実が、田中に致命的な油断を生んだ。

「もう完璧だ。バレるわけがない」

カメラの位置も、立ち位置も、タイミングも、全て計算し尽くした。駅の防犯カメラの位置も把握した。駅員の巡回パターンも観察した。

まるで仕事のプロジェクトを進めるように、犯罪を「システム化」していた。

ネット上のコミュニティでは、田中は「ベテラン」として扱われるようになっていた。初心者からの質問に答え、「成功体験」を共有していた。

「捕まる奴は、準備が足りないんだ。俺みたいにちゃんとやれば大丈夫」

そんな投稿をしていた。

後に警察の調べで明らかになったところによると、この時点で田中のPCには、200本以上の盗撮動画が保存されていた。被害者は、少なくとも50人以上。

そして、その中の一人が、加藤美咲だった。

第3章: 発覚の予兆

# 被害者の違和感

加藤美咲が最初に違和感を覚えたのは、4月の終わりだった。

いつもの通勤電車。いつもの時間。でも、何かがおかしい。

視線を感じる。誰かに見られている。

そんな気がして、さりげなく周囲を見回したが、誰もこちらを見ていない。皆、スマホを見ているか、眠っているか、ぼんやりと外を見ているか。

「気のせいか…」

でも、その「気のせい」は、毎日続いた。

ある朝、ふと足元に視線を感じた。見下ろすと、隣に立つ男性の靴が、不自然にこちらを向いている。

美咲の心臓が跳ねた。

「まさか…」

最近ニュースで見た、盗撮犯の手口。靴にカメラを仕込むという。

男性は40代くらい。スーツ姿。顔はうつむいていて見えない。

美咲は、さりげなく一歩横に移動した。男性は動かない。

「考えすぎだ。失礼なことを考えてる」

でも、次の日も、その次の日も、同じような違和感が続いた。

# 友人への相談

耐えきれなくなった美咲は、親友の祐子に相談した。

「最近、電車で変な視線を感じるんだ」

カフェで、美咲は小声で打ち明けた。

「盗撮とか…そういうの、考えすぎかな」

祐子は真剣な表情で聞いていた。

「それ、絶対に無視しちゃダメだよ。女の勘って当たるんだから」

そう言って、祐子はスマホを取り出した。

「ほら、これ見て。盗撮被害の防止アプリ。怪しいと思ったら、すぐ写真撮って通報できるの」

「でも、証拠がないのに…」

「証拠は作ればいいの。相手が怪しい動きしたら、すぐスマホのカメラ向けるの。それだけで犯人は逃げるから」

祐子の言葉に、美咲は少し勇気が出た。

「あと、これも」

祐子が見せたのは、小型の防犯ブザーだった。

「万が一の時は、これ鳴らして。周りの人が気づくから」

その日、美咲は同じものを買って帰った。

# 犯人の焦り

一方、田中も変化に気づいていた。

最近、「獲物」の警戒心が強くなっている気がする。以前なら簡単に近づけた女性も、すぐに移動してしまう。

「何か変だ…」

ニュースでも、盗撮犯の逮捕が相次いで報道されていた。駅には「盗撮犯罪撲滅」のポスターが増えた。防犯カメラも増設されている。

「そろそろ、やめ時か?」

頭ではそう考えた。でも、体は欲望に支配されていた。

「あと一回。あと一回だけ」

アルコール依存症の患者が「あと一杯だけ」と言うように、田中は自分に嘘をつき続けた。

# 決定的な瞬間

6月14日。運命の前日。

美咲は、いつものように朝の東海道線に乗った。そして、「あの感覚」を感じた。

今日は違った。確信があった。

さりげなくスマホのカメラを起動させる。自撮りモードにして、背後を映す。

画面に映ったのは、うつむいた中年男性。そして、不自然にこちらを向いた靴。

美咲の手が震えた。

次の駅で電車が止まった瞬間、美咲は素早く降りた。そして、振り返って、その男性の顔を記憶に焼き付けた。

中肉中背。黒縁メガネ。紺のスーツ。

田中浩二は、まだ自分が「記録」されたことに気づいていなかった。

美咲は、駅員室に向かった。

「盗撮の被害に遭ったかもしれません」

その通報が、警察に届いたのは、その日の午前10時だった。

第4章: 運命の日

# 警察の動き

神奈川県警察本部、生活安全課。

「また盗撮の被害相談です」

若い刑事が、ファイルを机に置いた。

担当刑事の山下警部補(35歳)は、資料に目を通した。

「被害者の証言は?」

「確証はないが、複数回、同じ電車で違和感を感じたと。昨日、不審な男性の特徴を記録したそうです」

「防犯カメラは?」

「該当駅の映像を確認中です」

山下は頷いた。盗撮犯罪は、近年急増していた。しかし、現行犯でなければ逮捕は難しい。証拠が必要だ。

「被害者に協力を依頼しよう。明日、同じ電車に乗ってもらう。我々も私服で乗る。もし同じ男が現れたら…」

「現行犯逮捕、ですね」

「そうだ」

こうして、翌日の作戦が決まった。

# 運命の朝 — 田中の視点

6月15日、午前6時30分。

田中は、いつものように起床した。妻はまだ寝ている。娘も。

一人で朝食を取り、身支度を整える。

スーツを着て、ネクタイを締める。鏡に映る自分は、どこにでもいるサラリーマンだった。

「今日も…やるか」

ポケットにペン型カメラを入れる。もう手慣れた動作。罪悪感はない。

「大丈夫。今日も大丈夫だ」

玄関を出る時、珍しく妻が起きてきた。

「あなた、今日は早く帰れる?娘の授業参観があるんだけど」

「ああ、たぶん無理」

そっけなく答えて、ドアを閉めた。

それが、妻と交わす最後の「普通の会話」になるとは、知る由もなかった。

# 運命の朝 — 美咲の視点

同じ朝、美咲は緊張していた。

昨日、警察から連絡があった。協力してほしいと。

「もし同じ男性が現れたら、我々に合図を。そのまま普通に振る舞ってください」

私服警官が、同じ車両に乗る。美咲の近くに、女性警官も配置される。

「大丈夫。警察がいる」

自分に言い聞かせながら、美咲はいつもの電車に乗った。

# 対峙

午前7時23分。

美咲が乗った車両に、田中が乗り込んできた。

その瞬間、美咲の心臓が激しく跳ねた。

「いた…」

間違いない。昨日記憶した顔。紺のスーツ。黒縁メガネ。

田中は、何も気づかず、いつものように美咲の近くに立った。

美咲は、小さく咳払いをした。これが合図だ。

車両の反対側にいた私服警官が、ゆっくりと近づいてくる。

田中は、まだ何も気づいていない。ポケットの中のカメラに、手をかける。

「今日も撮ろう」

ボタンを押そうとした、その時。

「警察です」

背後から声がした。

田中の体が凍りついた。

第5章: 逮捕の瞬間

# 崩壊の始まり

「え…?」

田中が振り返ると、そこには警察手帳を掲げた男性が立っていた。

「神奈川県警です。あなたに話を聞きたいことがあります」

頭が真っ白になった。心臓が破裂しそうだった。

「な、何の…」

「まず、そのポケットの中のものを見せていただけますか」

田中の手が震えた。

「これは…仕事の…」

「では、ご協力いただけますね。任意同行をお願いします」

任意同行。この言葉の意味を、田中は知っていた。事実上の逮捕だ。

周囲の乗客が、こちらを見ている。美咲も、少し離れた場所から見ていた。

「あの人…私を…」

美咲の目に涙が浮かんだ。怒りと、安堵と、様々な感情が渦巻いた。

次の駅で、田中は警官に連れられて降りた。

ホームを歩く間、田中の足は震えていた。

「終わった…全て終わった…」

# 取調室

駅から警察署まで、車で移動した。

田中は後部座席で、ただうつむいていた。言葉が出なかった。

警察署に到着し、取調室に通された。

灰色の壁。金属製の机と椅子。録音機器。

刑事ドラマで見た光景が、現実になった。

山下警部補が椅子に座った。

「田中浩二さん、42歳。IT企業勤務。既婚、お子さんが一人。間違いないですね」

「…はい」

「あなたのポケットから、小型カメラが見つかりました。説明していただけますか」

「それは…仕事で…」

「仕事で、通勤電車の中で女性を撮影する必要があるんですか?」

言葉に詰まった。

「あなたの自宅を捜索する令状を取ります。PCやスマホを調べれば、全て分かります。今、正直に話せば、情状酌量の余地もある」

山下の言葉に、田中の最後の抵抗が崩れた。

「…やりました」

その言葉を発した瞬間、涙が溢れた。

「今まで、何回くらい?」

「分かりません…たくさん…」

「データは保存していますね」

「…はい」

「何人くらいの被害者がいますか」

「分かりません…50人…いや、もっと…」

山下は、ため息をついた。

「田中さん、あなたがやったことの重大性、分かっていますか?」

「…すみません…すみません…」

謝罪の言葉しか出なかった。

# 自宅捜索

その日の午後、田中の自宅に捜索が入った。

妻の恵子(38歳)は、突然の警察の訪問に言葉を失った。

「盗撮…?主人が…?」

信じられなかった。夫は真面目なサラリーマンだった。そんなことをする人間には見えなかった。

警察は、田中の書斎からPCを押収した。外付けハードディスクも、スマホも。

「こんなに…」

PCを調べた警官が、絶句した。

200本以上の動画。整然とフォルダ分けされ、日付と撮影場所が記録されていた。

まるで仕事のファイルを整理するように、犯罪の記録が保存されていた。

「全部、証拠になります」

恵子は、その場に座り込んだ。

「嘘…夢なら覚めて…」

しかし、これは現実だった。

娘は学校にいた。まだ何も知らない。

「お子さんには、どう説明しますか」

警官の質問に、恵子は答えられなかった。

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第6章: 失ったもの

# 留置場での日々

田中は逮捕され、留置場に入れられた。

6畳ほどの狭い部屋。窓には鉄格子。トイレは剥き出し。

同室には、別の容疑者が二人いた。

夜、固い床に横になりながら、田中は天井を見つめた。

「どうしてこうなった…」

後悔しかなかった。

でも、もう遅い。時間は戻らない。

# 家族の崩壊

妻の恵子は、数日間、何も食べられなかった。

娘に、どう説明すればいいのか。

「パパは?パパはいつ帰ってくるの?」

無邪気な娘の質問に、答えられなかった。

恵子の母親が駆けつけてきた。

「離婚しなさい。こんな男、捨てなさい」

母の言葉に、恵子は泣き崩れた。

「私、何も気づかなかった…妻として、何をしていたの…」

自分を責めた。

会社にも、事件のことが伝わった。

同僚たちは、最初は信じなかった。

「田中さんが?嘘だろ?」

でも、ニュースで報道されたとき、皆が真実を知った。

「【速報】IT企業社員、通勤電車で盗撮繰り返す。被害者50名以上か」

会社は、即座に田中を懲戒解雇にした。

「社会的信用を著しく傷つける行為」

退職金はゼロ。

# 失われた全て

逮捕から一ヶ月。

田中が失ったものをリストにすると、こうなる。

– 仕事(解雇)
– 収入(ゼロ)
– 家族(妻は離婚準備中)
– 自宅(ローンが払えず、売却へ)
– 友人(全員が連絡を絶った)
– 社会的信用(前科者)
– 娘の笑顔(二度と見られないかもしれない)

全てを失った。

ポケットに入れた小さなカメラと引き換えに。

# 初公判

7月、田中の初公判が開かれた。

裁判所の法廷。傍聴席には、マスコミと、被害者の一部が座っていた。

美咲もいた。

裁判長が、起訴状を読み上げる。

「被告は、令和4年12月から令和5年6月にかけて、通勤電車内において、複数回にわたり盗撮行為を繰り返した…」

淡々とした声が、法廷に響く。

「被告人、間違いありませんか」

「…間違いありません」

田中の声は、震えていた。

検察官が、厳しい論告をした。

「被告の犯行は、計画的かつ常習的であり、悪質極まりない。被害者は50名を超え、その心の傷は計り知れません。被告には、実刑をもって臨むべきです」

弁護人が、情状酌量を求めた。

「被告は深く反省しております。家族も崩壊し、社会的制裁も十分に受けております…」

しかし、裁判長の表情は厳しかった。

# 判決

9月。判決の日。

「被告人を、懲役2年の実刑に処す」

実刑。執行猶予なし。

つまり、刑務所に入ることが確定した。

「被告の犯行は、常習的かつ計画的であり、被害者の数も多い。犯行の動機も身勝手であり、酌量の余地は少ない…」

裁判長の言葉が続く。

田中は、ただうつむいていた。

傍聴席の美咲は、複雑な表情をしていた。

「これで、終わり…?」

刑罰は下された。でも、美咲の心の傷は、まだ癒えていなかった。

第7章: 被害者のその後

# PTSDとの闘い

美咲は、事件後、通勤電車に乗れなくなった。

電車に乗ろうとすると、動悸がして、呼吸が苦しくなる。

「また見られている…」

そんな恐怖が襲ってくる。

会社には、事情を説明して、時差通勤に変更してもらった。

でも、それでも辛かった。

夜、眠れない日が続いた。夢の中でも、あの時の恐怖が蘇る。

# カウンセリング

医師の勧めで、美咲はカウンセリングに通い始めた。

「あなたは悪くありません。悪いのは犯人です」

カウンセラーの言葉に、少しずつ心が軽くなっていった。

「でも、もっと早く気づいて、通報すべきだった…」

「いいえ。あなたは勇気を持って通報しました。それで犯人は捕まりました。他の被害者を救ったんです」

そう言われて、初めて泣けた。

ずっと我慢していた涙が、堰を切ったように溢れた。

# 回復への道

半年後、美咲は少しずつ回復していった。

まだ完全ではない。電車に乗ると、時々不安になる。

でも、以前のような激しいパニックは減った。

友人の祐子が、ずっと支えてくれた。

「美咲は強いよ。ちゃんと前を向いてる」

「ありがとう。祐子がいてくれたから」

二人でカフェでコーヒーを飲みながら、美咲は言った。

「私、同じような被害者を支援する活動に参加しようと思うの」

「え?」

「同じ苦しみを味わう人を、一人でも減らしたい。そのために、私の経験を話したい」

祐子は、美咲の手を握った。

「応援する」

美咲は、被害者から、支援者へと変わっていこうとしていた。

エピローグ: 警告

# 刑務所の中

田中浩二は、今、刑務所の中にいる。

毎日、単調な作業を繰り返す。外の世界との接触は、ほとんどない。

面会に来るのは、恵子だけだった。

離婚はまだ成立していない。でも、時間の問題だろう。

「娘は…元気か?」

「会いたくないって。パパのことは忘れたいって」

その言葉が、何よりも辛かった。

田中は、毎日、自分の犯した罪を考える。

「なぜ、あんなことを…」

答えは出ない。

ただ一つ分かることは、「一瞬の欲望が、全てを奪った」という事実だけだ。

# 消せないデジタルの記録

田中のPCから押収された映像は、証拠として永久に保存される。

そして、インターネット上には、田中の実名と顔写真が残り続ける。

「盗撮犯 田中浩二」

検索すれば、すぐに出てくる。

出所しても、この記録は消えない。

就職も、結婚も、全てに影響する。

デジタル時代の犯罪は、永遠に記録され続ける。

# 必ず捕まる時代

現代の防犯技術は、日々進化している。

– 高性能な防犯カメラ(AIによる不審行動検知)
– 盗撮発見アプリ
– 市民の防犯意識の向上
– 警察の捜査技術の進歩

「バレないだろう」は、通用しない。

田中も、最初はそう思っていた。

でも、結果は逮捕だった。

犯罪は、必ず発覚する。

# メッセージ

この物語は、実際の事件を基にしている。

盗撮犯罪の被害者は、年間数千人にのぼる。

そして、その裏には、数千人の加害者がいる。

彼らは皆、「自分だけは大丈夫」と思っている。

でも、必ず捕まる。

そして、失うものは計り知れない。

– 家族
– 仕事
– 友人
– 社会的信用
– 自由
– 未来

全てを失う。

たった一瞬の欲望のために。

**犯罪は、絶対に割に合わない。**

防犯対策: このような被害を防ぐために

# 被害者になりないために

1. **警戒心を持つ**
– 違和感を感じたら、すぐに場所を移動
– 「気のせい」で済まさない

2. **スマホを活用**
– 不審な人物がいたら、さりげなく撮影
– 盗撮発見アプリの活用

3. **防犯ブザーを携帯**
– 万が一の時、周囲に助けを求められる

4. **服装の工夫**
– 盗撮されにくい服装を選ぶ
– ただし、これは被害者の責任ではない

5. **すぐに通報**
– 怪しいと思ったら、駅員や警察に連絡
– 泣き寝入りしない

# 盗撮カメラの発見方法

1. **不自然な物体をチェック**
– ペン、時計、靴など、不自然に向けられているものに注意

2. **光の反射を確認**
– カメラのレンズは光を反射する
– スマホのライトで照らすと見つけやすい

3. **盗撮発見器の使用**
– 専門の機器も市販されている

# 周囲の人ができること

1. **見て見ぬふりをしない**
– 不審な行動を見かけたら、声をかける
– または駅員に通報

2. **被害者をサポート**
– 被害を訴えている人がいたら、証言協力を

3. **防犯意識の共有**
– 家族、友人と情報を共有

法律と罰則

# 該当する法律

盗撮犯罪は、以下の法律で処罰される:

1. **各都道府県の迷惑防止条例違反**
– 罰則: 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
– 常習の場合: 2年以下の懲役または100万円以下の罰金

2. **軽犯罪法違反**
– 拘留または科料

3. **児童ポルノ禁止法**(被害者が18歳未満の場合)
– 3年以下の懲役または300万円以下の罰金

# 実刑の可能性

– 初犯でも、常習性が認められれば実刑の可能性あり
– 被害者が多数の場合、執行猶予は難しい
– 田中のケースのように、懲役2年の実刑も

# 前科の影響

盗撮で前科がつくと:

1. **就職が困難**
– 特に教育関係、公務員は不可能に近い
– 一般企業でも、バックグラウンドチェックで発覚

2. **海外渡航の制限**
– 国によっては入国拒否

3. **家族への影響**
– 子供の進学、就職にも影響する可能性

4. **デジタル記録**
– インターネット上に永久に残る

# 民事責任

刑事罰とは別に:

1. **損害賠償請求**
– 被害者から、精神的苦痛に対する賠償請求
– 数十万円から数百万円

2. **慰謝料**
– 被害の程度によって変動

最後に

この物語の田中浩二は、特別な人間ではなかった。

どこにでもいる、普通のサラリーマンだった。

でも、「一瞬の魔が差して」犯罪に手を染めた。

そして、全てを失った。

もしあなたが、今、同じような誘惑に駆られているなら、この物語を思い出してほしい。

**犯罪は、絶対に割に合わない。**

失うものは、あまりにも大きい。

一方、もしあなたが被害者なら、決して一人で抱え込まないでほしい。

勇気を持って、通報してほしい。

あなたの勇気が、次の被害者を救う。

**盗撮は犯罪です。**
**被害者を生まない社会を、皆で作りましょう。**

—

【相談窓口】
– 警察相談専用電話: #9110
– 性犯罪被害相談電話: #8103
– 各都道府県の性暴力被害者支援センター

一人で悩まず、相談してください。

(完)

—

*この物語は、実際の事件を基に、犯罪抑止と被害者支援を目的として作成されたフィクションです。登場人物、団体名等は全て架空のものです。*

*文字数: 約8,200字*

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