夫が帰ってきたのは、土曜の深夜1時過ぎだった。
「接待ゴルフ」と聞いていた。でも、ゴルフ焼けのない白い顔で、ネクタイを指一本横にずらしたまま、二階への階段を上がってくる足音が——重くない。罪悪感のある人間の歩き方じゃない。軽い。まるで何もなかったかのように、ただ帰ってきただけという足音。
38歳、神奈川の戸建て、子ども2人。その夜から私は、この階段にカメラを置くことを決めた。
問題は、どのカメラが「この場所で本当に機能するか」だった。値段の安い小型カメラをネットで3個買って全部失敗してから、本気で調べ直した3ヶ月間の記録をここに書く。
目次
階段という「一本道」を選んだ理由
家の中で最も情報が集まるのは、玄関でも寝室でも居間でもなく、階段だ。
玄関は靴を確認できても、誰かが中へ上がったかどうかまでは分からない。居間は広すぎてカメラの角度が難しく、死角が多い。寝室の入り口は、設置できても気づかれるリスクが高い。
でも階段は違う。
幅が1〜1.2メートルしかない。通る人間は必ずフレームに収まる。踊り場から上を向いて撮れば全身が映り、踊り場から下を向けば顔に廊下の光が当たる。うちの踊り場には飾り棚があり、観葉植物や小物が並んでいる。そこに「モノとして溶け込んだ」カメラを置けば、まず気づかれない。
さらに言えば、夜中の帰宅を記録するためには暗所での撮影が絶対条件になる。廊下の常夜灯程度の光しかない状況で、「誰が」「どんな表情で」「何時に」通過したかを記録できるカメラでなければ何の意味もない。これが最初の選定基準だった。
失敗した最初の3週間
最初はスマートフォンの録画アプリで乗り切ろうとした。
踊り場の棚にスマホを伏せておく作戦。3日で終わった。画面のわずかな光が漏れて、夫が「これ何?」と手に取った。言い訳をした。それ以来、スマホという選択肢はなくなった。
次に、Amazonで2,000円台の「超小型防犯カメラ」と書かれた商品を購入した。届いた当日の夜、廊下の電気を消してテスト録画。翌朝モニターで確認した映像は、黒いノイズ画面だった。赤外線(IR)搭載なしのカメラは、日中には使えても、深夜の廊下では完全に機能を失う。
さらに別メーカーの5,000円台を試したが、動体検知の反応が遅く、人が通り過ぎた1〜2秒後にようやく録画が始まるという仕様だった。映っていたのは後ろ姿だけ。顔は映っていなかった。
安いカメラは夜に死ぬ。 この結論に辿り着くまで、3週間と1万2千円以上を無駄にした。
GX-105:暗闇で「顔まで」映すということの意味
本気で調べ直して、最終的に辿り着いたのがGX-105(89,800円)だった。
価格を見てひるんだのは正直に言う。でも、スペックに書かれていた2つの仕様——「4K解像度・赤外線暗視」と「180日間待機」——は、それまで試してきた機種と次元が違った。
設置当日の夜、廊下の電気を全部消した状態でテスト録画をした。翌朝確認した映像に、顔の輪郭から表情まで鮮明に映っていた。 常夜灯の僅かな光を赤外線で補完して、真っ暗に見える廊下でも人物の顔まで特定できる映像が残っていた。
4Kという解像度は、拡大したときに差が出る。「人影が通った」ではなく「この人間が、この表情で、この時間に通過した」という事実の記録になる。これが証拠として使えるレベルの映像だ。180日待機は、充電切れで「その夜だけ撮れなかった」という最悪の失敗を構造的に防ぐ。設置したら放置できる。
9万円近い価格を「高い」と思う気持ちは分かる。でも、夜中の廊下で顔まで映せるカメラは市場に多くない。性能を妥協してから後悔するより、価格に躊躇する後悔の方がずっと軽い。夜間の帰宅を記録したいなら、ここを起点に考えるべきだと思う。
CK-016B:植物として溶け込み、外出先から「今」を覗く
GX-105の弱点が一つある。形が「カメラらしい」ことだ。よく見れば分かる形状をしている。踊り場の棚に置いても、目が慣れた家族に気づかれるリスクがゼロではない。
踊り場の棚にはもともと、サンスベリアの小鉢が置いてあった。引っ越した頃から置いていたもので、夫も子どもたちも誰も気にしていなかった。
CK-016B(観葉植物型、24,800円)は、その場所に完璧に収まった。外見は普通の観葉植物。葉の隙間にレンズが内蔵されている。1080P、Wi-Fiに接続すればスマホからリアルタイムで映像を確認できる。付属のSDカードは32GB。
設置した翌日、外出先のショッピングモールの駐車場からアプリを開いた。踊り場の映像がリアルタイムで流れていた。子どもが階段を上がる様子が見えた。「今、誰がどこにいるか」が、どこからでも確認できる。
GX-105との最大の違いは「リアルタイム確認ができるか否か」だ。後から映像を確認する録画型がGX-105、今の状況をその場で把握したい場合はCK-016B。外出が多い人、「帰宅前に状況を確認してから動きたい」という場面がある人には、こちらが実用的だ。
CK-017B:「動いた瞬間だけ」録るティッシュ箱の精度
階段の踊り場だけでは、寝室の前の動きが取れないことに気づいた。
寝室前のサイドテーブルには、ティッシュの箱が置いてあった。誰も気にしない、存在感ゼロのアイテム。
CK-017B(ティッシュ箱型、19,800円)は、そのまま置けばティッシュ箱にしか見えない。1080P、Wi-Fi対応、そして動体検知機能が搭載されている。実際にティッシュを入れた状態でも動作に問題はなかった。使い勝手として完成している。
動体検知は想像以上に重要だった。常時録画では24時間分の映像が溜まり、確認だけで膨大な時間がかかる。でも動体検知なら「動きがあった瞬間だけ」録画するため、SDカードの容量を最小限に抑えられ、確認すべき映像も自然と絞られる。
実際に使い始めて2週間後、深夜に動体検知が反応した記録が3件残っていた。何時に、誰が、どの方向へ動いたか。それだけで充分な情報になった。
階段と寝室前の二点を同時にカバーする構成にしてから、記録の空白がなくなった。
CK-MB01:「今夜、急に必要になった」ための機動力
最後に試したのがCK-MB01(モバイルバッテリー型、15,800円)だ。
用途が少し違う。固定設置ではなく、持ち運びができる。 外見は完全なモバイルバッテリーで、スマホへの充電も実際にできる。充電ケーブルを挿せば充電される。この自然さが強い。
棚に固定する必要がないため、「今夜、急に確認が必要になった場所」にその都度置ける。車の中、外出先のテーブルの上、夫が立ち寄る場所。固定型カメラが届かない状況で機能する。バッグに入れて移動できるカメラという発想は、他の3機種にはない強みだ。
4機種の中で最も安く、15,800円という価格は「まず1台試したい」という入口にもなる。ただし夜間の暗所撮影はGX-105と比較すると限界があるため、日中か、ある程度照明のある場所での使用が本領を発揮する。補完的に持っておくと、固定カメラではカバーできない状況で何度か助けられた。
状況別に迷わない選び方
3ヶ月と4台を経て、判断基準は整理された。
夜中の帰宅を顔まで記録したい → GX-105一択。 赤外線なしでは何も映らない。180日待機は「その夜だけ切れていた」という失敗を防ぐ。9万円は高いが、成果を考えれば十分回収できる価格だ。
外出中にリアルタイムで確認したい → CK-016B。 植物として完全に溶け込み、スマホから今この瞬間の映像を確認できる。Wi-Fiが届けば世界中どこからでも見られる。
動いた瞬間だけ証拠を残したい → CK-017B。 動体検知で確認作業を省力化し、SDカードの容量も無駄にしない。ティッシュ箱という偽装は家庭内で最も気づかれにくい形状のひとつだ。
場所を変えながら使いたい → CK-MB01。 固定設置が難しい場所、急に確認が必要になった状況で機動力を発揮する。
4ヶ月後の現在
あの土曜の深夜1時から、4ヶ月が経過した。
夫は今もほぼ毎週末、接待ゴルフへ出かける。帰宅時刻が少しだけ早くなった。私は何も言っていない。言う必要がない。
映像がある。
証拠は静かに積み重なっている。必要なとき、必要な場所で、必要な人間に見せれば、それで充分だ。今は、その日の準備をしている。
今、「階段に何かを置きたい」と思っているなら、最初に決めるべきことは一つだ。夜間に、顔まで映す必要があるか。
答えがYESなら、今日中にGX-105を確認してほしい。暗所撮影の性能差は、失敗してから初めて実感するものだ。最初から正しい選択をした方が、時間もお金も節約できる。
※撮影は関連法令を遵守の上、ご利用ください。登場人物・団体は全て架空です。


