夜11時半。ドアスコープに目を押し当てた瞬間、廊下の人感ライトが消えた。
誰かがそこにいた——そう確信した瞬間だった。
都内の1Kに引っ越して3ヶ月。1月に別れた元カレの連絡先はSNSも電話番号も全てブロックした。それなのに先週、玄関前のドアマットが1センチずれていた。郵便受けの広告の束が、確認した向きと逆になっていた夜があった。警察に相談したら「証拠がないと動けない」と言われた。
— 本稿でいう「階段・廊下への防犯カメラ設置」とは、マンション共用部や自室玄関前に小型・偽装型カメラを置き、不審者の接近や行動を動画として記録する防犯対策を指す。ストーカー規制法の改正や2023年施行の撮影罪(性的姿態等撮影罪)を経て、動画証拠の有無が警察の初動を大きく左右するようになった現在、記録を「作る」ことが被害者の自衛手段として現実的な選択肢になっている。
証拠を作るしか方法がない。そう決めて機材を調べ始めたら、同じ状況に追い込まれた女性がいかに多いかを知り、怒りとも恐怖ともつかない感情が込み上げた。
目次
1センチのズレが証明していたこと
ドアマットのズレは、最初は気のせいだと思った。引越し業者かもしれない、宅配が触ったのかもしれない。でも翌週、また1センチ。今度は逆方向にずれていた。
気のせいで2回は起きない。
廊下には人感センサーライトがある。夜11時以降に反応するのは、その時間帯に帰宅する住人だけのはずだ。それが2週続けて、3分以上の間欠点灯パターンを見せた。誰かが廊下に3分以上留まっていることを意味する。
この段階で、もう「気のせい」という選択肢はなくなった。
階段・廊下カメラに求めた絶対条件
機材選びで最初に決めたのは、絶対に気づかれてはいけないということだ。相手が気づけば証拠は取れないし、逆上のリスクもある。
完全偽装:廊下や玄関前に見知らぬカメラがあれば誰でも気づく。花瓶、荷物、日用品に見えるものでないと意味がない。
夜間・暗所対応:廊下の人感ライトはカメラが起動する前に消えることがある。ライトが消えた後でも判別できる画質が必要だった。
動体検知+長時間録画:24時間録画では電池が持たない。動体を検知したときだけ録画するモードで、1週間分の証拠を1台で確保したかった。
この3条件を全部満たす機種は、正直そう多くなかった。
結論から言う:玄関脇の小物入れにこれを仕込んだ
散々比較した結果、最初に購入したのがスパイダーズX PRO 4K UT-124W Angel Eye(49,800円)だ。
決め手は3つ。4K解像度、180度広角レンズ、そして「基板完成実用ユニット」という設計。自分で好きなケースや日用品に仕込めるモジュールで、玄関脇の小物入れに違和感ゼロで設置できた。設置して2週間、廊下を通った全員の顔が鮮明に録れていた。夜間の暗所でも、人感ライトが点いた瞬間の顔が判別できるレベルの画質だった。
証拠として警察や弁護士に持っていく映像なら、4Kは必須だと思う。顔の特定・服装の特定となると、解像度が証拠能力に直結する。弁護士にも「4K画質で顔と服装が判別できれば、接近禁止仮処分の申立に十分使える」と言われた。
コンセントが近くにあるなら、これを「常時通電」で置く
ANGEL EYEは予算的にきつい場合、次点で検討すべきなのがスパイダーズX コンセント型・電源タップ型カメラ(29,800円)だ。
コンセントに差し込む偽装型で、電池切れの心配が完全にゼロ。自室内の玄関側コンセントに設置すれば、扉が開く瞬間から廊下方向も視野に入る。出張や外出中もリアルタイムで映像を確認でき、不在中に部屋に入られるリスクにも対応できる。
「長期間・常時稼働」を優先するなら、コンセント型は電池管理の手間がなく現実的な選択肢だ。設置場所がコンセント周辺に限られる制約はあるが、玄関脇にコンセントがある間取りなら真っ先に検討してほしい。
「植物なら不審じゃない」という正解
廊下や玄関前の棚に置くなら、一番自然に見えるのが観葉植物型カモフラージュカメラ CK-016B(24,800円)だ。
本当に植物に見える。インテリアとして「あっていい」オブジェクトだから、訪問者に不審がられることがほぼない。1080P画質、リモート視聴対応、32GB内蔵で、スマホから映像確認できる。
玄関前の小棚に観葉植物として置いた友人(同じ状況だった)は、2週間で問題の人物の顔を3回映像に収め、弁護士に証拠として提出した。「植物型は疑われない」というのは、使ってみて本当だとわかった。
まず試したい人への最初の一台
コスパと設置の手軽さで選ぶなら、ティッシュ箱型カモフラージュカメラ CK-017B(19,800円)を玄関から見える棚に置くのが最も手軽だ。
ティッシュ箱はどの家にも「あって当然」の日用品だ。動体検知とWiFiリアルタイム配信に対応しており、スマホアプリで通知を受け取れる。19,800円という価格帯は、防犯カメラを初めて導入する人の「試しやすい最初の一台」として機能する。
ただし、長期間・高画質の証拠収集が目的なら、最終的にはANGEL EYEか観葉植物型への移行を前提に考えてほしい。証拠の質は後で取り返せない。
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ここで一度整理する。
2026年現在、ストーカー規制法の適用範囲は拡大されており、映像証拠が警察の初動対応に与える影響は以前より大きくなっている。警察庁の統計によれば、ストーカー相談件数は年間2万件を超え、その多くが「証拠不足」で初動対応が遅れているのが現状だ(出典:警察庁「令和5年におけるストーカー事案等の対応状況について」)。4Kまたは1080Pの偽装型カメラを玄関前または室内から廊下方向に向けて設置し、動体検知+タイムスタンプ付き録画を維持することが、現時点でもっとも証拠能力の高い準備になる。
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集合住宅の廊下・階段に置くとき、法的に知っておくべきこと
マンションの共用廊下や階段は「共有部分」だ。管理規約によっては個人がカメラを設置することを禁じている場合がある。
まず確認すべき順序は次の通り。管理規約のカメラ設置条項を確認する(禁止していない物件が大半だが要確認)。管理会社に口頭で相談する(「防犯上の理由で一時的に設置したい」と伝えると協力してくれるケースが多い)。撮影範囲が他の住人の部屋の入口を常時映す設計にしない(プライバシー侵害になりうる)。
一方、自室内や自室玄関ドア内側からの撮影に制約はない。ドア内側の小棚やラックにカメラを置き、ドアが開いた瞬間から撮影できる設定にする方法が、法的リスクが最も低い選択だ。
撮れた映像は、本当に警察や弁護士に使ってもらえるの?
結論:使える。ただし「いつ・どこで・何を撮ったか」の記録が同時に必要。
具体的には——映像のタイムスタンプが正確で改ざんされていないこと、設置場所が自分の支配下(自室・自室玄関前)であること、撮影目的が証拠保全であること、の3点が揃っていれば、接近禁止仮処分の申立や警察への被害申告に使える映像として弁護士も受け取ってくれる。
カメラのタイムスタンプは設置前に正確な日時に設定しておくこと。これを怠ると「いつ撮れた映像か」が法的に曖昧になる。
動体検知って、猫や宅配員にも全部反応して通知が止まらなくなるの?
感度設定で絞れる。大型動体だけに反応するモードがあれば、誤検知はほぼ消える。
スパイダーズX ANGEL EYEは感度調整機能を持っており、廊下の通行人全員ではなく「一定時間同じ場所に留まる動体」に絞った設定ができた。2週間の設置で、誤検知による無駄な録画は数回だけ。宅配通知と不審者通知の区別がすぐにつくようになる。
「証拠がない」と言われた側の人間がやるべきこと
これを読んでいるあなたが同じ状況なら、今すぐやるべきことを一つだけ伝える。
日時・状況のメモを今日から残してください。
カメラを設置するよりも先に——ドアマットのズレ、郵便受けの異変、インターフォンの着信履歴、廊下のセンサーライトの点灯時刻——全部、写真と日時つきで記録する。これが弁護士や警察への最初の相談資料になる。カメラはその次だ。証拠映像と日時ログが揃って初めて、警察も弁護士も「動ける状態」になる。
玄関の電気が消えた夜から3週間、私はもう怖くない。玄関前に「見ている目」ができたからだ。恐怖は、証拠を取る準備をした瞬間に、少しだけ小さくなる。
もしあなたが今「証拠がない」と言われた側にいるなら——
証拠を作ればいい。そのための道具は、今日から揃えられる。
※撮影は関連法令を遵守の上、ご利用ください。登場人物・団体は全て架空です。


